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中国語翻訳サービスと台湾語翻訳──「台湾語翻訳」を依頼する前に知っておきたいこと

「台湾語に翻訳してください」──これは、台湾関連のプロジェクトを検討しているお客様から、私たち翻訳会社に寄せられるご相談のひとつです。しかし実は、このご相談に対して最初に確認しなければならない重要なことがあります。それは、本当に必要なのは「台湾語の翻訳」なのか、それとも「台湾で使われる中国語(台湾華語)の翻訳」なのか、という点です。

このコラムでは、「台湾語」について解説しています。このコラムをご一読いただくと、お客様が必要としている翻訳は、「台湾語なのか、中国語なのか」がよくご理解いただけると思います。

目次

1. 台湾で使われている主な言語

台湾では多言語が共存していますが、主に次の3つがよく知られています。

  • 中国語(台湾華語):公用語。ビジネス・教育・行政で使用される。
  • 台湾語(閩南語):公用語。家庭内や高齢者の間でよく使われる。
  • 客家語や原住民語:一部地域やコミュニティで使用される。
  • 地下鉄の車内放送もこの中国語、台湾語、客家語、そして英語の順に流れることが多いです。さて、ビジネスシーンで用いられる言語は、基本的に中国語(台湾華語)で、繁体字で表記されます。この中国語は、中国の北京語、普通語、共通語などと呼ばれることもあります。台湾語はどのように使われるかというと、主に話し言葉としての役割が中心で、文書での使用はきわめて限定的です。

    2. 実例:誤解から起きた中国語翻訳のミスマッチ

    ある日系メーカー様から、台湾市場向けの製品パンフレットを「台湾語に翻訳したいと考えている」というご相談が入りました。しかし、「実際に現地の販売代理店と打ち合わせをしてみると、営業資料や契約文書はすべて繁体字の中国語(台湾華語)で作成されており、台湾語(閩南語)のパンフレットは不要だったので、中国語に変更したい」とのご連絡をいただきました。

    つまりこの場合、お客様が「台湾で使われている言語は台湾語」と思い込んでいたことが原因で、中国語翻訳の方向性がずれてしまっていたのです。

    3. 台湾語表記はどんな時に使われているか?

    では、台湾語の表現が実際に使われているのはどのようなケースでしょうか?

    (1) 地元密着型の商品やサービス

    ローカル市場をターゲットとする食品、伝統工芸、地域観光などの場合、高齢者や地元住民との親しみを重視して台湾語を使用するケースがあります。例えば、台湾語で「厚工」という形容詞は、「丹精込めて作られた」という意味で、美味しいものが地元っ子にとって好感度が高く、食品の広告や店名でよく使われます。丁寧に作られた安心の品質、ご年配の方も安心して利用できるというイメージだそうです。

    例)豆花(台湾スイーツ)「藤香厚工豆花」店の看板

    出典: https://www.facebook.com/Tofu29391000/

    (2) 映像・演劇・音楽分野

    エンターテインメントの分野でも、台湾語のセリフや歌詞は珍しくありません。台湾語を使うことで台湾文化とシンクロし、視聴者に親近感を抱かせることができます。台湾の伝統芸能オペラ「歌仔戲」と現代文化を融合させたドラマ『孟婆客棧』」のセリフを例に挙げます。
    (※台湾語の音声に、中国語字幕が入っています)

    セリフ:我的目標很簡單,就是讓所有貴客去喝湯轉世之前,給我們五顆星
    機械翻訳:私の目標はシンプルです。湯を飲んで転生する前に、皆さまに五つ星の評価をいただくことです。

    出典:「公視台語台」

    「喝湯」は、「あの世に辿り着いたとき「孟婆湯(もうばとう)」という薬を飲むことで、現世の記憶を失い、安心して生まれ変わることができるという台湾の民間信仰から来ています。「五つ星」とは、レストランの格付けではなく、Googleレビューの評価が大好きな現代っ子文化から来ています。冥界という設定ながら、ユーモラスな展開と人間ドラマが織り交ぜられた、人気の台湾ドラマです。

    4. 台湾語の文書は存在するのか?

    台湾語は基本的に話し言葉であり、ビジネス向けの「書き言葉」は現時点では一般的ではありません。ただ、近年では台湾語を文字で表す試みも進んでおり、小学校では台湾語を系統立てて学ぶ授業も行われています。そこでは台湾語を漢字や台湾の注音符号、あるいは英文字を使って表記した文書や教科書が使われています。

    例)台湾語を漢字で表記した文

    5.【まとめ】ビジネスの実務は中国語が基本

    台湾は多様な言語文化をもつ社会です。中国語翻訳の際は、「誰に」「どのような目的で」伝えるのかを明確にし、中国語(台湾華語)と台湾語の適切な使い分けを行うことが、対象顧客とスムーズなコミュニケーションを図り、信頼を構築する第一歩になります。

    台湾向けの翻訳については、結論として、台湾語ではなく、繁体字の中国語(台湾華語)が基本です。台湾語による文書化は特殊なケースを除き、ビジネスではほぼ必要とされません。

    当社では、契約書・技術仕様書・企業案内などのビジネス文書の中国語翻訳や、展示会や商談などの中国語通訳サービスをご提供いたしております。中国語翻訳サービスの国際規格ISO17100の要件を満たす実績豊富な中国語翻訳者が作業を担当いたします。台湾向けの中国語翻訳・通訳をご検討の際は、どうぞお気軽にMie Translation Servicesまでご相談ください。プロジェクトの目的やターゲットに応じて、最適な中国語翻訳ソリューションをご提案いたします。

    お見積りのご依頼は、こちらまで、お気軽にお問い合わせください。