中国語には「繁体字」と「簡体字」の二種類の文字があります。台湾や香港では繁体字が使われ、中国では簡体字が使われています。会社の資料を中国語翻訳するときは、どちらを採用するのがよいでしょうか?二つの文字にはどのような違いがあるのか、ビジネスではどちらを採用するのがいいか。この記事では、漢字の歴史と具体例を交えながら、詳しく解説します。
1.繁体字と簡体字の歴史
繁体字の歴史
繁体字は古代中国から使われてきた伝統的な漢字の形です。その歴史は数千年に及び、甲骨文や金文といった古代文字をルーツに持っています。形が複雑で画数が多いものが多いですが、その分、意味の成り立ちや語源が分かりやすいのが特徴です。
例えば、「馬」という漢字は、馬の形をかたどった象形文字から発展しました。繁体字はこうした漢字の起源をできるだけ残し、伝統的な書法を維持してきました。
簡体字の歴史
1950年代に中国本土で実施された「簡体字改革」によって、多くの漢字が簡略化されました。これにより、教育の普及や識字率の向上を図ることが目的とされました。複雑な形の漢字は画数を減らしたり、部首を変えたり、漢字全体の形を簡略化したりして、より簡単に、素早く書けるようになりました。
2.繁体字と簡体字の具体的な違い
簡体字が作られたときに工夫された漢字の形を具体的な例を挙げながら、見ていきます。
1. 画数が減った例
画数を大幅に減らし、形を簡略化した漢字です。例えば、「体」の旧字体(繁体字)では「骨へん」に「豊」と書き、23画ありますが、簡体字は日本語の漢字と同じ形で、わずか7画と、三分の一以下の画数になっています。
繁体字 | 簡体字 | 日本語の意味 |
學 | 学 | 学ぶ |
體 | 体 | 体 |
愛 | 爱 | 愛 |
飛 | 飞 | 飛ぶ |
2. 部首の形が変わった例
部首の形そのものが変わった漢字もあります。例えば、以下の例は、部首の中に書かれた文字は削除され、全体の構造が非常にシンプルになっているものです。
繁体字 | 簡体字 | 日本語の意味 |
廣 | 广 | 広い |
廠 | 厂 | 工場など |
門 | 门 | 門 |
3. 全体の形が大きく変わった例
漢字の形が大きく異なる例もあります。以下の例のように、簡体字の漢字を見ただけでは、もとの漢字を想像できないものも少なくありません。中国語簡体字を学んだ人でなければ、読解が困難になります。
繁体字 | 簡体字 | 日本語の意味 |
雲 | 云 | 雲 |
龍 | 龙 | 龍 |
書 | 书 | 本 |
4. 日本の漢字との比較
中国語繁体字は、日本語の旧字体と似通っているものが少なくありません。一方で、中国語簡体字は、上述の3で説明した「画数が減った例、部首の形が変わった例、全体の形が大きく変わった例」の漢字を除くと、日本の常用漢字に似た形をしているものが比較的多いです。
繁体字 | 簡体字 | 日本語の意味 |
學 | 学 | 学 |
體 | 体 | 体 |
點 | 点 | 点 |
國 | 国 | 国 |
3.ビジネスでは、簡体字と繁体字のどちらを採用すべきか?
ビジネスで中国語翻訳が必要になったとき、中国語簡体字と中国語繁体字のどちらを採用するべきかは、ターゲット市場によって異なります。
• 中国をターゲットにする場合
中国の市場向けに製品やサービスを展開するのであれば、簡体字の中国語翻訳が必要です。契約書や公文書などの法的な文書から、広告、ウェブサイトなどマーケティング関連などを含めて、すべて簡体字で表記されます。
• 台湾・香港をターゲットにする場合
台湾や香港の消費者・企業向けにマーケティングを行う場合は、繁体字を使用します。単なる漢字の変換だけでなく、文化的な違いも考慮し、現地の言語習慣にあわせた適切な表現に言い換える必要があります。
• アジア全域をカバーしたい場合
簡体字と繁体字の両方を用意することで、より広範囲な市場にリーチできます。例えば、企業のウェブサイトでは言語切り替えの中に「簡体字・繁体字」の両方を用意しておくと非常に有効です。
4.まとめ
中国語の繁体字と簡体字は、歴史的背景や文化の違いによって使い分けられています。ビジネスで中国語翻訳を必要とする場合は、ターゲット市場に合わせて適切な文字を選ぶことが大切です。
また、中国語翻訳の質を左右するのは、中国語翻訳者が単なる文字の違いを理解しているだけでなく、その文化的背景を理解していることも重要です。適切な用語や表現を使った中国語翻訳にするためには、やはりそれぞれの言語のネイティブに中国語翻訳を依頼することが大切です。
ミエトランスレーションサービスは、繁体字と簡体字の違いを十分に理解し、それぞれのネイティブが翻訳を担当しています。中国語翻訳のことなら、どうぞお気軽にご相談ください。