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AI中国語翻訳の考察  〜part2 マーケティング

「AIによる中国語翻訳の考察〜Part 1」のコラムでは、法律、契約書、公文書、マニュアルなどの正確性や逐語訳が必要とされる分野では、AI中国語翻訳はなかなか良い仕事をするという話をご紹介いたしました。今回は、「Part 2」 として、広告やマーケティング分野のAI中国語翻訳について考察します。

翻訳業界に「トランスクリエーション」という言葉があります。「翻訳(トランスレート)」と「創造(クリエイト)」を組み合わせたもので、単なる直訳ではなく、原文の意図や感情をターゲット言語で創造的に再表現する翻訳手法を指します。広告分野の翻訳では、まさしく、こうした感性が必要ですが、AI中国語翻訳でこれがどこまで実現できるでしょうか。

このコラムでは、日本語の広告コピーをAI翻訳で中国語にした結果を分析し、広告・マーケティング分野におけるAI中国語翻訳の有効性について掘り下げて解説します。

※ 弊社が使用している生成AIは、セキュリティが保証された有償版の製品で、販売元とNDAを締結しています。

1.サンプル「決めつけ刑事」ネーミングのAI中国語訳(日中翻訳)

ACジャパンの2024年度全国キャンペーンで使われたキャラクター「決めつけ刑事」を検証材料にお借りし、AIで中国語翻訳を作り、分析しました。次のふたつを前提条件として、AI中国語翻訳を実施しました。

  • ネーミングとしての訳だしを指示するプロンプトを作成し、AIに入れる
  • 状況設定や人物像などを把握するために、公式サイト情報をAIに学習させる
  • 2024年度全国キャンペーン:決めつけ刑事(デカ)

    出典: 公益社団法人ACジャパン『きめつけ刑事(全国キャンペーン)』

    「決めつけ刑事」の中文訳をAIに3パターン依頼しました。 
    二行目にあるのは、AIによる「訳し方」の解説です。(カッコ内はAI解説の和訳)

    このAI中国語翻訳を、当社の日中翻訳の品質管理者が改めて分析、評価したところ、AI自身が説明している内容とはかなりかけ離れた判定となりました。品質管理者による判定および解説は次のとおりです。

    1.「決断警探」の中国語訳は思考が逆方向になっている。本来ネガティブな意味だが、中国語翻訳は「決断力がある刑事」というポジティブで良いイメージを与える。

    2.「定罪先生」の中国語翻訳は男性(性別)が強調されており、台湾の現代社会が重視するジェンダーレスの潮流にそぐわず、広告として適切ではない。

    3.「没査就判刑警」の中国語翻訳は、意味を単に直訳しただけで、翻訳調で広告コピーとしては成り立ちにくい。

    AIが提案したネーミングの中国語翻訳は、「言葉を置き換えるだけの翻訳としては間違っていないが、本来の目的を達成するための翻訳としては成立しない」ものでした。そのため、広告文として使うことは難しいと判定されました。仮に人手編集(ポストエディット)の工程を入れても、実質上はヒトによる翻訳のやり直しとなります。

    やはり、AIの回答は必ずしも正しいものではないということを十分に認識する必要があります。また、こうした分析と判断できる力量を持つ「ヒト」がAI翻訳文を確認することが大切です。

    2.サンプル「決めつけ刑事」セリフAI中国語訳(日中翻訳)

    次に、決めつけ刑事のセリフ「お前がやったんだろ、知らない人がつぶやいてんだよ!!」をAIで翻訳します。AI翻訳の精度は、情報が多いほど上がるため、センテンスとして成り立っているセリフのAI翻訳はネーミングより良い仕上がりになりました。

    二行目は、中国語翻訳文の表現ポイントをAI自身が解説したものです(カッコ内はAIによる解説の和訳です)。一見、説得力があるように見えますが、やはり、ヒトによる評価とは若干異なりました。品質管理者による評価は次のとおりです。

    1.話し方が学生か若者風で、画像にあるベテラン刑事の口調ではない。
    2.簡潔でよい。刑事の口調に最も近いが、尋問風に微調整したほうがよい。
    3.文中の「留言」がどれを指すか、画像と一致させる必要がある。

    全体的にネーミング翻訳に比べて精度があがったものの、最終稿として使うには、人手編集で調整してブラッシュアップする必要がありました。あるいは、コマンドを入れ直し、AIに何度か修正させると表現は向上するかもしれません。また、3のように訳文の中に、ビジュアルとの整合性を持たせる必要がある文字が入っている場合は特に注意が必要です。

    3.サンプル「台湾九份の観光紹介」のAI日本語訳(中日翻訳)

    翻訳言語ペアは逆方向ですが、中国語から日本語への翻訳で、大変うまくアウトプットできた例もあります。以下は、台湾観光署のウエブサイトにある「九份の観光紹介」です。

    出典:台灣觀光署

    原文:
    九份隸屬新北市瑞芳區,九份在金礦業興盛前,以採樟煮腦為業。此處計有九十口樟腦灶,而十口灶為一份,故共有九份,久而久之演變為九份地名。九份之發展過程可謂一段先民採金史,隨採金人潮的湧入而繁華,又隨採金事業的沒落而褪色。約略西元1890年左右,居民在福山宮土地祠距小金瓜不遠處掘到金脈,村落頓時聚集了三、四千戶的淘金人口,此為九份的第一次繁華。
    日治時代,大量的黃金被輸往日本,致使九份產金量達到顛峰。三○年代,隨著金價上漲締造了「亞洲金都」繁華絢麗的輝煌盛況,當時由海上遙望九份聚落,燈火燦爛,時人稱之為「小上海」、「小香港」。二戰後,金礦因前期的開採殆盡,產量大幅下滑,終在缺乏開採價值與經營不善之下而結束,採金事業也因此走入歷史滄桑中。曾幾何時,隨著電影「悲情城市」一片在威尼斯影展中造成轟動之後,這個沒落數十載的小城,又三度勾起了人們的注視與回憶。昔日繁華的老街、廢棄的礦坑、自成一格的礦區風光與淘金史,經由媒體的一再傳播,吸引了四方尋找靈感的藝術家尋蹤到此,嚮往復古的遊客也大量前來緬懷思古、細細品味這悲情城市中的有情天地。

    AI翻訳の結果は次のとおり、すばらしいものでした。

    もちろん、原文の中国語と照らし合わせながら、訳漏れや誤訳を確認する作業は必要です。しかし、日本語だけ読むと、大変流暢に書かれており、資料として読むには十分な精度だと思われます。

    4.まとめ

    AIは学習するにつれてAI翻訳の精度はあがっていきます。しかし、精度がどれだけあがっても、最終的には、ヒトが確認をして最終稿を仕上げる工程を入れなければ、そのまま使うことはできません。
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    おまけ
    生成AIがおまけでビジュアルイメージまでアウトプットしてくれました。(この中国語翻訳は残念ながらNGなので、もちろん没稿です……)